病診連携

社会医療法人行岡医学研究会 行岡病院
脳神経外科

香川 尚己


低侵襲、機能温存を目指した脳腫瘍診療(2025.3.19)

行岡病院は、開設より90年、社会医療法人として救急医療を中心に地域医療に貢献してまいりました。急性期病棟だけでなく、障害者病棟、療養病棟、回復期リハビリテーション病棟も併設しています。関連教育施設として、行岡医学技術専門学校(看護師、歯科衛生士)や大阪行岡医療専門学校長柄校(診療放射線技師、臨床検査技師、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師)、大阪行岡医療大学(医療学部 理学療法学科)を有し、地域の人々の健康を支えるために、学術性豊かな医療を展開して、地域に貢献する役割を果たしていきたいと考えております。

行岡病院脳神経外科としては、幅広い脳神経外科疾患を診療しつつ、中枢神経系腫瘍性疾患、脊椎・脊髄疾患を専門的に診療する体制を構築しています。脳腫瘍診療に対するコンセプトは「低侵襲かつ機能温存を目指した治療」を目指しております。2024年より外視鏡・内視鏡を導入し、低侵襲な治療を行っております。これらの導入により、より「安全」で患者さんにとって「優しい」手術が可能になってきています。同時に、患者さんの予後を改善するためには、最大限に摘出することも重要な要素になります。そのため、術前シミュレーションやナビゲーションなどを駆使した画像誘導手術を用いて正確な治療を行っております。術中蛍光診断や電気生理学的モニタリングも併用しています。血管が豊富な腫瘍性病変の場合は、術前に栄養血管塞栓を行い摘出する対応も行っております。頭蓋底腫瘍の場合は、開頭術だけでなく、経鼻内視鏡を用いて、開頭しない方法で腫瘍を摘出する術式も取り入れています。再発例や難治例に対する紹介も受け付けております。

正確な診断を行い最良な治療方針を選択することも大変重要です。遺伝子診断や関連施設とのカンファレンスなどを行い、現在進行中の治験や臨床研究を含め、最良の情報提供を行うシステムを構築しております。

小児の中枢神経系腫瘍についても診察しております。手術症例はもちろんのこと、小児がん長期生存者に対する長期フォローアップ外来も行っております。小児脳腫瘍の治療成績も向上してきており長期生存の患者さんが増えております。時間とともに再発の危険性は下がっていきますが、内分泌障害や認知機能障害、脳血管障害、二次がんなどのリスクと長期間に渡って関わっていく必要があります。

水頭症は多くの脳神経外科疾患に合併する疾患です。標準的な術式は脳室腹腔短絡術(シャント術)という術式ですが、水頭症の中には内視鏡を用いた開窓術(例:第3脳室底開窓術)を行い、シャント術を回避できる症例があります。また、シャントが留置された症例でも、何らかの理由でシャントに不具合が生じた場合、シャントを抜去して水頭症を治療できる症例があります。シャント機能不全を繰り返す水頭症症例など難治性となっている紹介にも対応しております。

脊椎・脊髄疾患に関しては、リウマチ関連の頭蓋頸椎移行部の固定術やC1−2の前方の螺子固定、胸腰椎移行部の前方固定や椎体置換、骨切り術など、整形外科と共に脊椎脊髄センター体制を構築しています。2022年からは脊椎内視鏡を導入し、低侵襲の内視鏡脊椎手術が増えてきています。圧迫骨折に対する経皮的椎体形成術を併用した固定術、椎体置換術まで幅広く対応しています。

二分脊椎疾患についても診療を開始しております。二分脊椎は生涯にわたり多臓器にまたがる多彩な症状を呈する疾患です。脳神経外科だけでなく、整形外科、リハビリテーション、泌尿器科など多角的なフォローアップが必要です。小児期からの移行期診療症例だけでなく、最近は成人期に発見される二分脊椎症例、脊髄係留症例が増えております。症状は下肢の疼痛や感覚運動障害、膀胱直腸障害などで受診され診断されるケースがあります。診断や治療方針で困っておられる症例がありましたらご連絡頂けますと幸いです。

機能的脳神経外科外来として、痙縮や難治性てんかんなどにも対応しております。痙縮に関してはバクロフェンポンプ植え込み術、ボトックス注射などに対応しております。また、認知症外来や頭痛外来のような専門外来も開設し診療を行っております。

以上、行岡病院脳神経外科の最近の取り組みをご紹介させて頂きました。

最後に、我々だけの力だけでは、良い医療を北区の住民の皆様にお届けすることはできず、多くの関連施設、診療所の皆様と手を取り合って協力させて頂きたいと思っております。北区医師会の皆様におかれましては、今後ともご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します。

※ 詳細な内容は以下をご参照ください。
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