病診連携

加納総合病院

脳卒中センター長 安田守孝
脳卒中副センター長 中澤和智


最近の脳卒中治療の進歩と当院の脳卒中治療の特徴について(2013.7.31)

要旨

1.くも膜下出血には従来のクリッピング術だけでなく、コイル塞栓術も有用です。
2.くも膜下出血後の脳血管攣縮には血管形成術も有効です。
3.脳出血には神経内視鏡手術も広まりつつあります。
4.頚動脈狭窄症には手術だけでなく、ステント留置術も行えます。
5.急性脳動脈閉塞術にはt-PA治療が第一選択ですが、血栓回収療法も予後を改善させる治療です。
6.脳卒中後のリハビリテーションを急性期から回復期まで継続して行っています。
7.当院ではこれらの治療を資格を得た専門医が担当しています。
8.急性頭痛と片麻痺は早期に紹介をお願い致します。

本文

 ここ数年で、脳卒中の治療方法が増えています。それに対応しながらすすめている当院の脳卒中治療の特徴を紹介させていただきます。

 脳血管の「こぶ」が破裂する「くも膜下出血」には従来の「クリッピング術」だけでなく、脳血管内治療(カテーテル治療)によるから「こぶ」に柔らかい金属糸をつめる「コイル塞栓術」[1](図1)が広まり、2つの治療の利点を生かすことができます。
また、くも膜下出血後の脳血管攣縮にともなう脳梗塞にも血管内治療による血管形成術は有効です[2]。(図2)

 「脳出血」には開頭術だけでなく、内視鏡で小さな穴から血液を除去する「神経内視鏡手術」が広まっています[3](図3)。時間短縮だけでなく、治療の幅が広がりました。

 動脈硬化による頚動脈狭窄症には、従来の「内膜はくり術」だけでなく2007年から国内でも「ステント留置術」が認可されています[4](図4)。重い持病をかかえている方や、「内膜はくり術」の困難な方にも治療が可能です。

 脳血管が急に閉塞する「脳梗塞」には、4.5時間以内であれば,t-PA(薬)の点滴治療が第一選択の治療です。しかし、t-PA治療のできる方は,20人に1人です。血管が閉塞したままでは、家庭復帰もわずかに15%です。2010年に血管の中から特殊な器械で、血栓を回収し再開通させる治療が認可され(図5)、4割近くが家庭復帰したという結果が示されています[5]。

 残念なことに、新しい治療には,資格のある医師もとでしか受けられないものもあります。また、新しい治療であるゆえ、その治療医によって結果が左右されることもあります。当院では脳外科手術、脳血管内治療、神経内内視鏡治療と脳卒中の急性期に必要なすべての治療を経験の豊富な専門医が行っています。

 また、脳卒中後は半数の方に機能障害が残ります。機能障害からの回復には急性期のみの短期間のリハビリテーションでは不十分で、数ヶ月にわたる回復期リハビリテーションを続けることが大切です[6]。当院では、急性期から回復期までのリハビリテーションを継続できるため、在宅までのシームレスな治療の継続ができます(図6)

 突然の強い頭痛や突然の半身まひ,言語障害などは、早期に脳卒中診療病院にご紹介ください。ここ数年間で変革期を迎えた脳卒中診療体制に遅れることなく対応し、一人でも多くの患者さんを救いたい。それが私たちの願いです。

引用文献

※ 詳細な内容は以下をご参照ください。(実症例の写真も掲載しております)
  ▼すべての図表をPDFで見る(1.72MB)


図1.脳動脈瘤塞栓術

図1.脳動脈瘤塞栓術


図2.くも膜下出血後脳血管攣縮(スパスム)の血管形成術

図2.くも膜下出血後脳血管攣縮 (スパスム)の
血管形成術


図3.脳内血腫の除去

図3.脳内血腫の除去


図4.頚動脈狭窄ステント前・ステント後

図4.頚動脈狭窄ステント前・ステント後


図5.脳梗塞急性期再開通)

図5.脳梗塞急性期再開通

図6.脳卒中はチーム医療「急性期から回復期までの包括支持」

図6.脳卒中はチーム医療
急性期から回復期までの包括支持